はじめて川に身を投じようと思った。

自らを殺める方法探したい。いい加減もう、楽になりたい。

朝、父と母と姉にそれぞれ叩き起こされた。廃人のように眠っていたらしい。薬の副作用で朝は眠い。今週は祝日以外の平日はすべてすっぴんで家を出た。やる気もなければ、する気もない。とにもかくにも、だるいのだ。会社を遅刻することはできない、ギリギリなのだ。

姉より先に家を出るのに、私の歩幅は狭く、遅い。だから途中追い抜かれる。すこし前は一緒に駅まで行っていたけど、ペースについていけないからやめた。結果、いつもより一本遅い電車に乗る。トビラが開いた瞬間の、車内のメンツが違うことも慣れた。だってもう、一ヶ月すぎているし。立ったまま寝るから、マフラーはヨダレだらけだ。でも防止用のマスクをつけてみた。結果いつもよりヨダレがついていた。

出勤してすこしするとわかる。今日は調子がいいのか、悪いのか。周りの声は聞こえているだろうか、会話のキャッチボールはできているだろうか、仕事の処理速度はどうだろうか、白湯を飲みながら仕事をする。

今日は、物憂げだった。眠くて何も考えたくなかった。人間フリーズだ。やることはたしかにあるのに何もできない。ちんたらちんたら月末処理をした。数字は間違っていなかっただろうか、いくばくの不安が残る。

お昼ごはんは社内の女子社員と食べるのが定例になった。みんな楽しそうに話をする。今日は何も話せなかった。鶏きしめんを食べることで精一杯だった。

その帰り、給料日だから銀行へひとりで寄った。そしたら、襲いかかってきた。それがこの日記冒頭の短歌だ。するりと言葉が浮かんでしまった。あぁもう、ぜんぜん治ってないし、悪化してると認識した瞬間だった。

それからはもう、ぐずぐずで。午前より処理速度は遅くなってしまって、勤務中にはじめて別室で休んだ。メガネを外して、机にうずくまるような体制になって、そこで今日はじめて泣いた。死にたいと思った自分を悔いて泣いた。泣いて、泣いて、気づいたら寝ていた。一時間ほど経っていた。ヨダレもたれていた。仕事しなきゃ。

たらたらとだけど仕事をした。残業も殆どせずに切り上げた。またちんたらと歩きはじめる、無意識にいつもとは違うルートを選んでいて、ひとけのない、橋のへりに寄りかかって、川を眺めていた。

はじめて身を、投じようと思った。力をふり絞れば、橋の上にはのぼれる。それしたらあとは簡単だ。落ちればいい。水の中へ溺れて、体温を失って、そして、そのままなくなると思えた。

でも、選ぶならなんとなく、この川より、家の近所の川がいいなぁと思った。だからまたちんたら歩きはじめた。最寄り駅から帰るのは気が進まなかったので、一駅分、歩くことにした。

赤い電車と、身を投じようと思った川と並行に歩く。パンプスの音がやけに耳障りで、プライドのようなものを感じた。この道は、いつかきた道、あの人と、手を繋ぎながらよく歩いた。風は冷たいのに、思い出したら身体はそれでもあたたまろうとしていると思った。

残像。後悔。言い訳。すべて自分が悪い。人を傷つけてしまうのなら、死んだほうがマシだ。人を怒らせてしまうのなら、いなくなったほうがマシだ。そうしたら誰も、損にはならない。それでいいと思う。私が消えた方が、社会にとっては得なんだ。

ちんたら、ちんたら。道慣れただいすきな帰り道。デニーズの明かりは変わりなく、今日も赤信号に間に合うようにと駆ける人でたくさんだ。今の私には、とてもできない。

ごめんね。ごめんね。ぜんぶわたしがわるい。ぜんぶこうおもうじぶんがわるい。ちょうしにのってはいけない。なにもはつげんしたくない。このばにいたくない。きえたい。きえたい。いきたい。

苦しみながら、家についた。飛び降りたかったけれど、人の流れが邪魔をした。今日はもう眠ろう。また廃人のように眠ろう。どうせ起きてたって、どうしようもないことしか浮かばないから。

ただいま。おやすみ。